2025年12月菊地氏は福山氏の「奄美民謡シマ唄研究所」本拠地を訪れた。 2人の出逢いから伝えよう。
奄美シマ唄音源研究所の仲間でもあり、奄美民謡武下流講師・シマ唄研究者でもある福山尚史先生による奄美民謡の音階、音程の分析内容が2021年12月12日 奄美郷土研究会第370回例会に於いて発表された。「奄美大島のしま唄の変容と継承について」と題された講義内容は、シマ唄継承に於いて興味深い視点からの分析報告であり重要な内容であった。
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古く伝わるシマ唄は微分音を操っており、音の捉え方が都音階(オクターブ12半音平均律)を取り込んだ経緯で、演奏、指導し学ぶ過程で変容し当初の微分音を使用した演奏の継承が途絶えつつあるという学術的な分析内容である。
この定例会に偶然招待され居合わせたのが、100年前の奄美のシマ唄レコードの回転数を解明し復元した功労者である菊地明氏であった。100年程前の黒人ブルースやジャズといった海外ルーツミュージック・ジャンルにも同様にマイクロトーンを好んで表現する音楽的分析があることなど情報交換された。
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ハヤマワシで伝わっている昭和4年録音の中山音女さんのシマ唄を修正する活動は、福山氏の講義の後、一緒に同席した奄美郷土研究会員 折田肇先生の情報提供が最後の一押しとなり、活動記録と修正音源CD2枚を とびら として発表に至った。
分析の詳細については「中山音女氏のレコード吹込み音源真相に迫る報告書」第一章を発刊記事として公開し、第二章では同じトンボレコードでリリースされている同時期、他の楽曲の分析内容や音源、修正メソッドを奄美シマ唄音源研究所 丸秘資料として残した。
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2025年12月 福山氏と菊地氏の交流
菊地氏の専門は戦前ブルースやジャズなどのレコード録音回転数分析修正であり、1930年代フランス・パリ録音 Django Reinhardt – Cileman Hawkins & His All Star Jaz Band、Dicky wells & His Orchestra、Phillippe Brun & His Swing Band などのスィングジャズ修正、1920年代~60年代米国録音 Blind Willie Johnson、Lonnie Johnson 、Son House、Charlie Patton などブルース楽曲修正を完了しており、現在はBlind Blake全曲集の分析検証を継続中。修正音源の世界一般公開を強く要望されている。
福山氏はシマ唄の研究を精力的に継続しており2025年12月9日放送 岩崎宏美さんのNHKファミリーヒストリーに取材協力、岩崎宏美さんの高祖母の名前が出てくるシマ唄「徳之島節」を番組内で唄い、演奏者・研究者として出演された。また、失われた微分音の表現について同じ楽曲がどの時代から平均律音階表現に変容していったのだろうという研究テーマは奄美民謡の学術的論文としての発表が期待されている。
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奄美民謡の記録を調査する上で1960年代のオープンリール記録にも大きな再生速度誤差が懸念されており、三味線講師である福山氏による演奏的見解や菊地氏による機材特徴といった科学的分析、相互的交流による検証結果も待ち遠しい。演奏キーとは別に相対音程に対し好んで使用していた微分音の分析に於いても二人の交流がより科学的な再現性を持った音程数値となり福山氏の論文として仕上がる日も近いのではないだろうか。
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福山氏のシマ唄研究や三味線・シマ唄指導は子供たちへ伝統を魅せ、その才能や音楽愛を開花させ次の世代へと奄美のバトンを伝える活動である。2025年12月 この日 83才になるあんまの料理を頂き、美味しい茶っくわを飲みながら、朝花節を唄う小さな女の子たちに三味線を付けた。 2人は脈々と繋がる奄美の流れを感じていた。
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両名の研究標的は異なるが互いの音楽研究に対する情熱には共通の熱量を感じ、何より同じ奄美の遺伝的音楽愛を持つ両名の活躍に期待したい。
奄美シマ唄音源研究所












